蒲原城(かんばらじょう)
~甲相駿の争奪戦となった境目の城~
Parameters of
this castle
蒲原城は標高149mの城山に築かれており、東海道の難所である由比ヶ浜と薩捶峠や富士川河口を眼下に収めることで往来や水運を監視する重要な役割があったと考えられます。また富士川を境とした諸勢力(甲斐の武田氏、相模の後北条氏、駿河の今川氏)が軍事衝突する際の最前線に位置したため諸勢力による争奪戦が繰り広げられました。
武田信玄によって攻め落とされた後は武田家の城となりますが天正10年(1582年)の織田・徳川連合軍による甲州征伐の際に攻撃を受け落城し、そのまま廃城となりました。
現在は城跡公園として整備されており、山頂の本丸には神社が祀られています。
基本情報
城名(別名) | 蒲原城 |
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築城主 | 今川氏 |
築城年 | 天文(1532年~1555年)年間 |
カテゴリー | 室町時代 安土桃山時代 山城 |
関連項目 | 境目の城 |
遺構 | 石垣 土塁 大堀切 善福寺曲輪 本丸 |
住所(所在地) | 静岡県静岡市清水区蒲原2528 |
指定文化財 | 静岡市指定史跡 |
構造物 | 曲輪、土塁、堀切、石垣、展望台、逆茂木(復元) |
問い合わせ先 | 清水区役所 蒲原支所 地域振興係 |
電話番号 | 054-385-7730 |
縄張図・鳥観図
現地案内板より
遺構がよく確認できるのは本丸とその隣の善福寺曲輪です。
逆にそれ以外の曲輪などは藪に覆われつつあります。
ポイント
- 主な遺構 :
- 石垣
- 土塁
- 大堀切
- 善福寺曲輪
- 本丸
- 石垣
- 善福寺曲輪やその近辺の腰曲輪に石積が施されていました。
一部復元されたものもあるようです。
- 土塁
- 写真は善福寺曲輪の土塁です。
曲輪の外郭部を守るように配置されています。
- 大堀切
- 本丸と善福寺曲輪を断ち切る巨大で見事な堀切です。
- 善福寺曲輪
- 本丸の背後に位置し、土塁や石垣が残っています。
また櫓風の展望台と逆茂木が復元されていました。
逆茂木を復元するというのはあまり見たことが無く、興味深かったです。
- 本丸
- 本丸からは由比ヶ浜や薩捶峠まで見渡すことができます。
東海道を通る軍勢は必ずここを通過するためそれを見下ろすことができる蒲原城は重要拠点であったと思われます。
歴史的背景
今川氏によって築城された蒲原城は当初、駿東地域を巡って対立していた後北条氏への備えとして、今川家臣が在番し守りを固めていました。
天文23年(1554)に甲相駿三国同盟が結ばれると駿東地域も平穏が訪れ、引き続き今川家によって支配されていました。
永禄3年(1560年)に桶狭間にて今川義元が討死すると今川氏は急激な代替わりを強いられ領国は動揺します。この際今川氏の救援と称した後北条氏の軍勢が駿河に派遣され、蒲原城には後北条氏の家臣が城将として入城します。
今川氏の衰退は三国同盟にも影響し、ついに永禄10年(1567)に今川氏真が甲斐への塩止めを行うことで同盟は破綻、翌年には武田信玄が駿河に侵攻します。これに反発した北条氏康は今川氏に援軍を派遣し、蒲原城には後北条氏の一門衆にして長老格でもあった北条幻庵の次男氏信とその弟の長順らが入城し守りを固めます。後北条氏の援軍が背後に迫ると信玄は駿河から撤退しますが、信玄と同時に今川領内へ侵攻していた徳川家康によって駿府は落とされ、氏真は掛川城に落ち延びました。
永禄12年(1569)になると信玄は再び駿河侵攻を開始、蒲原城も激しい攻撃を受け激戦となります。甲陽軍鑑によればこの時に信玄の4男勝頼と武田信繫の嫡男信豊が先頭に立って城に攻めかかり、後に信玄から無謀すぎると評されたようですが、勝頼らの奮戦もあり蒲原城は陥落、城を守っていた北条氏信、長順ら将兵は悉く討死しました。
城を落とした信玄は自ら入城し蒲原城の改修を実施、武田氏の対後北条氏防衛拠点として使われるようになります。
元亀4年(1573)上洛を目指していた信玄は陣中にて病死し、諏訪四郎勝頼が陣代として跡を継ぎます。
勝頼は自身の権力基盤を固めるため積極的に外征し武田家の最大版図を築きますが、長篠の戦いでの大敗や外交政策の失敗によって内外ともに孤立化し勢力を衰退させます。
天正10年(1582)になると織田・徳川連合軍が武田領内へ侵攻を開始、蒲原城も連合軍の攻撃を受け落城、そのまま廃城になりました。
アクセス
公共交通機関
・JR新蒲原駅下車、徒歩40分
自家用車
・東名高速道路清水ICから国道1号線バイパス高浜インター経由で約45分
無料駐車場(蒲原城跡駐車場)あり、10台
駐車場からは搦め手口を経由して10分ほどで本丸や善福寺曲輪に到達できます。
大手口は消失していますのでこちらからしか入城することができません。
参考文献・サイト